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パイロットを救え!Auto GCASの開発史

 ロッキード・マーチン[NYSE:LMT]は、F-16戦闘機に「自動地上衝突回避システム(Auto GCAS)」を搭載しています。Auto GCASはF-35Aに搭載が決まり、F-35B、F-35Cにも装備されていきます。

 アメリカ空軍は2014年後半にAuto GCASを導入した結果、F-16パイロットの死亡事故を減らすことに成功しました。すでに7人のパイロットの命を救っています。

 

「自動地上衝突回避システム(Auto GCAS)」とは?

 

 ロッキード・マーチン[NYSE:LMT]、空軍研究所、NASAが共同で開発したシステムで、地形への制御飛行(CFIT)と呼ばれる事故を減らす仕組みになっています。米空軍の統計によると、CFITの事故は航空機の損失の26%を占め、F-16パイロットの死亡者の75%を占めています。

 

 Auto GCAS はバックグラウンドで実行され、パイロットの注意力が散漫になったり、タスクが飽和状態であったり、無力であったり、意識不明であったりするかどうかにかかわらず、自動的に機能します。システムにはパイロットオーバーライド機能があります。

 

 Auto GCASは、ロッキード・マーチンの技術集団「スカンクワークス」、空軍研究所、NASAが結集した研究の結果です。空軍のF-16Dを試験機として採用し、飛行試験は2009年にカリフォルニア州エドワーズ空軍基地にあるNASAアームストロング飛行研究センター(AFRC)で開始されました。

 

 Auto GCAS は現在、アメリカ空軍の600機以上のF-16(ブロック40/50)で動作しています。最近ではAuto GCAS はF-16(ブロック30)にも装着が可能となり、2020年に運用が可能となる予定です。F-16(ブロック30)は、1984年に配備されたモデルで、GE製エンジンがブロック30、P&W製エンジンがブロック32となっています。このように古いモデルでも改修して対応できる点も素晴らしいですね。

 

 F16戦闘機は、アメリカ空軍を始め同盟国が多数使用し、累計4500機以上生産されています。さまざまなブロック(ver)があり、中小国ではパイロットの育成やスキルの差からAuto GCASの装備のニーズが高いかもしれません。

 

 ロッキード・マーティンF-35共同プログラム事務局(JPO)は、2018年にF-35用Auto GCAS の統合と飛行試験を完了し、2019年7月に順次装備を開始しています。

 最終的にAuto GCASは、世界中の3,200機以上のF-35とそのパイロットを保護することになるでしょう。F-35合同プログラム事務局は、Auto GCASF-35の運用中に26件以上の地上に衝突することを防ぐと予想しています。

 

 今後、時間が経てば、このような自動回避システムが、自動車の自動運転技術などに導入されていくと思います。アメリカがテクノロジーの分野で優れているのは軍事技術から派生したテクノロジーを民間分野に導入を進めることができるところでしょうか。